いのちのいのこり


 青から紅へのグラデーション。
 空と共に雲もその色を変えていき、あと数刻もすれば再び夜を迎える。
 夜。
 夜。
 大量の資料が無造作に詰め込まれた箱を抱え、しゃがみこんだままカヅサはぼんやりと空を見上げた。





 あの恐ろしい戦士たちがルルサスという名を持っていたと正式に教えられたのは全てが終わった後だ。
 血の雨が止み、長過ぎる夜が明け、少年と少女たちの犠牲によって白い朝がやってきてからだ。軍令部に居た人間たちは既に知っていたようだったが、生憎カヅサはそのとき軍令部になど居るはずも無かった。イングラムを0組が制圧したという報を受け、さすがは亡き友の教え子だととびっきり祝福してやろうと画策していたのだ。その矢先に彼が味わったのは紛れも無い恐怖。
 突如として現れた巨人たちはあっという間に候補生や武官、力を持たない訓練生や文官までをも殺し、ルブルム広場に死体を積み上げた。
 襲撃によって魔導院はなんとかかたちを保っていたものの大魔法陣は機能しなくなり、カヅサは多くの11組候補生や訓練生たちと共に逃げ込んだはずの武装研究所に閉じ込められていた。周囲の状況など把握できるはずもなく、ただひたすらにいつ襲い来るか分からない戦士たちに怯え続けていたのだ。
 多分、きっと26年間の人生で一番長い夜だったんだよ、と彼は告げた。
 なんとか自力で壁を壊しエントランスへ転がり込むようにして脱出した時に彼が見たのはやはり血の海。ルルサスの戦士が剣を振るい、残された最後の砦であったはずの魔導院を完全に破壊しにやってきていたのだ。
「あの時はねぇ、本当に大変だったんだ」
 書類の束を燃やす。魔法ではなく、マッチで灯した小さな火で。
「リィド君やムツキ君たちが居てくれたからね。なんとか膠着状態だったんだ。でもまぁ0組の子たちみたいに強くないから、すぐに押されちゃってね。もう駄目だと思ってクリスタリウムで篭城してたんだよ」
「クリスタリウムで…?」
「そう。あそこはボクの研究室へ繋がってる。そこならルルサスから逃れることができるんじゃないかと思って」
 抱えていた箱を降ろし、火を放つ。めらめらと燃え上がり黒い屑となり空へ舞い上がる。魔法の研究だとか、ファントマだとか。諜報部から『もう必要ない』と言って処分を頼まれた機密書類を次から次へと燃やしていったが、これが最後の箱であったらしい。
「気づいたら…ルルサスは消えていた。エントランスへ戻ったら君たちの声を聞いたんだ。…もしやと思って0組教室へ行ってみたら、ね」
 記憶は今でも鮮明に残っている。死んだ友のように曖昧でもどかしいものではなく、顔と名前がちゃんと一致する。友が成績不審を嘆いていた(気がする)少女はシンク。少年はナインとジャック。元気が有り余っていた少女の名はケイト。赤毛で肌黒の少女だった。
「もしボク達がもっと早くエントランスへ向かっていれば…教室へ向かっていれば、彼らは死ななかったのかもしれない」
「…みんな、もうファントマが傷ついていて、助からなかったんです」
「分かってるよ。ファントマに深い傷を受ければどれだけ身体に傷が無かろうと手遅れさ。それでも、もしかしたらって少しだけ思ったんだ」
 そう言ってカヅサは立ち上がった。白衣の裾は煤で黒く汚れ、黒くなった血が付いている。彼自身はほとんど無傷であったが、魔導院を守ろうと戦った候補生たちの多くが死んだという。そしてそれはルルサスが消え去る前であり、彼らのことを覚えていないんだよと彼は嘆いた。
「すみません、オレたちが…オレ、が 」
 俺が弱かったからです、とでも続けたかったのであろう。しかしそんなマキナの口はカヅサの悲しげな笑みで閉じられる。
「マキナ君は悪くないよ。誰だって無力な自分を嘆くさ。全部タイミングが悪かっただ」
「それでも、白虎のルシになる選択をしたのは…オレ自身です」
「君自身だとしても、君はただ力が欲しかっただけなんだろう?大事な人を守りたいって気持ちが強すぎて、少しズレてしまっただけだ。それに考えてもみなよ。もし君とレム君がルシにならなかったとして、どうなったと思う?あの子たちと一緒に万魔殿へ行っていたろう?そしたら君たちは今ここに居ないことになる」
 カヅサは微笑んだ。「誰よりも0組の12人と近くに居たのは君たちさ。彼らがどんな風に笑って、どんなくだらない話をして盛り上がって、どんな遊びをして、どんな風に戦ったかを知っているのは君たちだけだろう?」
 だからそれをずっと覚えていて、と眼鏡の研究者は疲れた顔で言う。
 墓地は完全に荒らされ、墓がいくつあったのかも分からぬ程。彼の知っていた多くの人間の墓石も消え去り、土の中に眠る骨すらも見つからないようだ。捧げられた花束は燃え果て、粉砕された墓石が当たりに散らばっている。崩れた建物が道を塞ぐ。
 瓦礫の道を三歩ほど進んでからカヅサは遠い目をしながらマキナとレムに穏やかに語りかけた。
「ボクにはね、候補生だった頃から仲の良い友人が二人、二人だけ、居たんだよ。一人は君たちの指揮隊長でもあったクラサメ・スサヤ。もう一人は…君たちはもう覚えていないだろうし、ボクも覚えてはいないけれど、エミナ・ハナハルという人だったんだ」
 腕をを伸ばし、目の前に翳して「記録だと、これくらいの背だったのかなぁ」と言う。そして不意に何かを思いついたように首を傾げた。
「くだらない話だけれど、少しだけ付き合ってもらえるかい?」
「えっと、あの、はい…」
 唐突であったが、レムはほぼ反射的に返事をした。
「ボクは友達が少なかった。まぁ候補生の頃から色んなことをしていたから、当たり前と言っちゃ当たり前なんだけどね」
 近づいたら何されるか分からない、だなどと噂されて。女子生徒から付き合ってだなんて告白されたこともあったが、異性に対する興味など微塵も無かったからそれもすぐに終わった。武官になる気など毛頭無く、将来は武装研ギルドへ入りたいだなんて考えていた。そして幾度と無く月日が巡りその夢は叶った。
 研究主任の一人として研究資金と研究室をもぎ取り、好きなだけ自分の研究に没頭できるようになった。
 相変わらず研究内容は他人に理解されることが少なかったがそれでも満足はしていた。
 はずだ。
「不思議なんだよねぇ。ボクの記憶は候補生になってすぐ文官になって、そして君たちと出会ってるんだ。記憶が穴だらけさ。ボクは候補生の時に何をしていたのか、何を思っていたのか、どんな馬鹿なことをしていて…どんな風に過ごしていたか、何も思い出せないんだ。全部ごっそり遠いところへ行ってしまったよ」
「…仲、良かったんですね。クラサメ隊長と、エミナさんと」
「そうらしい。本当、驚きだよ。二人が居なくなってから、足りないものが多すぎて分からないんだ。何が足りないのかも分からない。けどそれだけ長い間ボクは彼らと同じ時間を過ごしていた。記憶が失われてしまったことは悲しいことだけど、記憶が消えたという事実のおかげで、ボクには大事な友人が居たんだってことを忘れずにいられた」
 おかげで人生の三分の一程の記憶が抜けたような気分だけどね、と悪戯っぽく笑む。
 悲壮感漂う顔色でもしているのかと思えばそうでもなく、むしろどこか清々しさすら含んでいる。レムは立ち上がって捧げられてすぐの花束が煤を被ってしまっていることに気付く。そっとその桜色の爪を備えた細い指先が黒くなることを厭わずに払ってやると「分かる、気がします」と言った。
「私の中から消えてしまった記憶はたくさんあります。けど、候補生になって、今に至までだいたいのことは覚えています。…でももし、本当にもし、マキナが居なくなってしまっていたら、どれだけの記憶が消え去ってしまったんだろうって。エース達のことを忘れてしまっていたら、何も残らなくなっちゃうんじゃないかって」
「その通りさ。君たちの記憶からルルサスに立ち向かった子たちは消えていない。ボクのように、全てを失わないでいられた。だから、どうか、彼ら を 」
 不意に彼の頬を流れ伝ったのは涙。
「忘れないであげてほしいんだ。忘れてしまうことはとてもつらくて、忘れられてしまうことは きっと、もっと つらい。ボクのようにならなかったんだから、どうか君たちがずっと年老いて死んでしまうまで忘れないでいてあげてほしいんだ。忘れられてしまうことに対する恐怖を君たちは知っているだろう?だから、彼らがどう生きて、どう死んでいったかを覚えていてほしい」
 真摯な眼差しは常に『歩く変態』という名をつけても何ら違和感の無いカヅサには酷く不自然なものに見えたが、マキナとレムは目を合わせこくりと頷いた。
「忘れません。彼らがどんな風に生きて、笑って、怒られて…死んでいったのか、ずっと覚えています。私が死ぬまでずっと」





「浮かない顔をしているね」
 レムは花を摘みに行った。
 まだ外は危ないという忠告に「私、ルシになれたくらいには強いから」だなんて笑えない冗談を言って草原へと出て行ったのだ。心配だから付いて行くと言って聞かないマキナに彼女はまだ仕事はたくさんあるんだから我慢して、とまるで母親のような口調で諭していた。
 そんな経緯から、若干不貞腐れた顔をしているマキナにカヅサはそう話掛けた。
 書類の処分が終わったら、次は荷物の片付け。魔導院から出て行くにしろなんにせよ、一度荷物をまとめてしまわなくてはいけない。カヅサの研究室は相変わらず物で溢れ返っていて、大掃除にマキナを借り出したのだ。
「別に…そんな、訳じゃ」
「忘れろなんて言わないよ。後悔しないで前へ進めなんて言わないよ」
「考えても無駄なことは分かってるんだ。でも…でも、もし、もしオレが…」
「ルシにならなかったとして、起こりうる未来を知っていたとして、そしたらこんなことにはならなかったって?」
 カヅサは手に持っていた筒状の装置を弄んだ。筒の中に満たされた液体に鎮座しているのはかつてマキナたち0組を導いた男の目玉。身体の一部から記憶を呼び出し、それを映像として復元するだなんて途方も無い技術は完成させつつあった。マキナの苦悩を知ってか知らずかは分からないが、カヅサは次に何か告げることなく装置の端に指を掛けた。
 途端に眼前にはその眼球の持ち主であったクラサメが見ていた景色が現れる。
 どこかへ逃げ出した軍令部長の若かりし姿。エミナと思われる女子生徒とカヅサが二人でパンを奪い合っている。時にはパスタをフォークで差し出してき、三人でリフレ名物であった巨大パフェを攻略しているであろう姿。燃え盛る大地に死んでゆく候補生。割れた鏡に向かい合い傷を隠すためのマスクを口に宛てがう。くるくる万華鏡のように映っては消えて行く0組の笑顔。
 エースが皮肉っぽく笑い、デュースが控えめに微笑む。トレイが何か自慢げに話をしている隣でシンクが遮るように大笑い。ケイトとナインが指差して笑ってきた直後に拳骨を見舞われ涙目になって、サイスとセブンがため息を漏らす。エイトとジャックがお腹がよじれる程笑って、茶化されたクイーンが顔を真っ赤にしながらも笑う。キングは無表情を装っているが口元に浮かぶ笑みを隠せていない。マキナがレムを見て幸せそうに笑み、レムも口を開けて笑う。
 朱雀のルシであったセツナの後ろ姿が真っ白に焼き切れ、最期に彼が見たのはカヅサとエミナと三人でカラーマントを誇らしげに鏡で着用している姿。
「クラサメ君はさ、秘匿大軍神の召喚に参加するってことの意味を分かり切っていたはずさ。ドクター・アレシアに育てられたあの子たちは軍神を召喚することの意味をあまり分かっていなかったようだったけど、話を聞いたら誰だって結果が分かることだった。軍神を召喚するために候補生と訓練生を贄にするのなら、率先して命を捨てる軍監が居ないといけない。彼はそう思ってたんだろうね」
「コンコルディア女王の暗殺疑惑をかけられた0組の濡れ衣を晴らすためだったと、諜報部の記録には…」
「あぁ。クラサメ君は優しいからね。もう誰も大事な人を失いたくないって思ったんだよ。だから自分が死にに行った。全く持って馬鹿な奴だとは思うけれど、流石そのクラサメ君が教えただけあってあの子たちも馬鹿だったよ」
「…」
「死ぬことの意味を知って死に行ったのかっていう違いはあるけれど、彼らはみんな自分の命を捨てたんだ。自分の意志で、誰かに左右されることなく」
「それが、馬鹿だと?」
「あぁ。馬鹿さ。残される立場の気持ちを分かっていたのに、勝手に死んだんだからね」
 目玉の標本を机に置き、怪しげな薬品類を箱に詰め込んで行く。
「クラサメ君が帰ってこなくて、記憶は失われたけれど、彼がとても大事な人だってことが分かってボクは後悔したんだ。今の君と同じで、『もし…』を何度も考えていた。セツナ卿の支援が死を意味することを分かっていたのに止められなかったのはボクが弱かったから。彼は死んだ後死体から目玉をえぐり出し、それをボクに提供するように諜報部へ手を回していたのに、あっという間にボクは彼を忘れてしまっていた。それも弱さ故。彼がどれだけボクを想っていてくれたかに気付けなかったのも怠慢さ」
「それは…違うんじゃないのか?」
「違わないさ。けど、考えてみたところで無駄だってことが分かった。もしボクに力があったとして、別の道を選んだとして、クラサメ君を死地へ送らないようにってどれだけ頑張っていたとしても結果はどうせ同じだったんだ。何をどうしたところでクラサメ君は死を選んでいただろうからね」
 これはもういらないよ。
 マキナが持っていた薄桃色の液体が揺らぐフラスコを指す。叩き割ってしまってくれていいよだなんて物騒なことを口走りながら、一度箱へ詰め込んだはずの何種類かの小瓶を取り出してはゴミ箱へ投げ込んで行く。
「君はレム君を守りたくて、力が欲しくてルシになる道を選んだ。けど今君はそれと別の選択をしていればよかったと言ってる。さっきも言ったけど、もし君がルシにならなかったとする。その場合レム君は朱雀のルシに選ばれ、君ではない白虎のルシとなった誰かと戦っていた。そしてその誰かに殺されていたかもしれない。君はきっと他のみんなと一緒に万魔殿へ向かって、死んでいた。結末を知っていたとして、君だけが万魔殿へ行こうとしたって他の子たちは許さなかったよ」
「あまり…意味が分からない」
「どんな道を選んだとしても、彼らの決意は固かったということさ。君がルシになるという選択をしたから、今ここでレム君と二人、生き残れた。死んだ0組の子を忘れないでいられる。クラサメ君のことをわずかでもいい、全て忘れてはいないでいてくれる。結果オーライさ」
「じゃあアンタは、隊長が死んだことを受け入れられたのか?」
 マキナは手にしていたフラスコを遠慮なく床の隅に叩き付けた。少しばかり甘ったるいような匂いが鼻孔を刺激する。媚薬かなにかの一種だろうが、そんなことはどうでもいい。
「受け入れるも何も、それが事実さ。残された者としてできる限りのことをしなきゃいけない。マキナ君、君は死んだ子たちのことが好きだったかい?」
「…嫌いではなかったさ」
「好きでは?」
「……好きさ。よそ者のオレとレムを気にかけていてくれたし、オレの焦りに本当はみんな気付いて、心配してくれていた。ルシになった後も。その好意に気付けなかっただけだ」
 そう言いながらマキナは悔しげに下唇を噛んだ。それを見てカヅサは一度だけ頷いた。
「十分。彼らに抱いていた感情を忘れないでいて、前へ進むんだよ」
「無理な「無理な話だって?知ってるよ、それくらい。今だってボクはクラサメ君の死を受け入れられてない。泣き落としでもすれば彼は死ななかったかもしれない。0組に責任を押し付けるかたちになったとしても、無理矢理それこそ監禁してでも死なせない道があったのかもしれない。でも、全ては程々に。いくら嘆いても誰かが死んだ事実は消えないものだ」
 振り上げた腕、その手の中には小瓶。マキナがそうしたのと同じように床に、机に、壁に叩き付けて行く。パァンと契機良い音を立てて中身をまき散らしながら砕け散って行く瓶を眺めながら、マキナはどこか納得することができたのか少しだけ笑みを浮かべた。
「さぁ、そろそろレム君が戻ってくる頃だ。さっさとこの部屋の掃除を済ませて墓地へ戻ろう。日が落ちる前に、まだまだやることは残っている」






「いーーーたーーーーーーい!痛い!痛いってば!!」
 日が暮れ始めた墓地に響くのは少女の叫び声。
 ムツキだ。ルルサスとの戦いで負傷した右足をレムに看てもらいながらも情けない声を上げている。
「もう少しだけ我慢してね。あとは包帯だけだから」
 しゃがみこむ彼女の隣にはたくさんの花。雑草であろうが、それでも色とりどりの花は美しく見える。奥ではリィドが瓦礫を運び、クオンがバテてしまい従卒の少女に介抱されていた。カルラが指示を飛ばす隣でナギは書類とにらめっこしながら頭を抱えて、脇をタチナミとカスミが大きな墓石を抱えて通り過ぎて行く。
 シノにヒルハタにフユ。
 死んで行った者は多いが、残された者たちも多い。
 各々が大切な人間の記憶を失い、失ったことすら忘れてしまっている中で進もうとしているのだ。瓦礫の向こうでフユの叫び声が届く。エンラと運んでいた瓦礫を彼の足に落としてしまったらしい。慌てて桃色のマントをつけた候補生が走って行く姿が見えた。
「…なぁ」
 そろそろクオンの代わりに瓦礫撤去の手伝いをしなければとてもリィド一人では終わりそうも無い。マキナはマントを脱ぎ、上着の袖をまくった。
「教えて欲しいんだ。アンタが知ってる隊長のこと。アンタだけが知ってるみんなのこと。…きっと、オレにできるのはそれを忘れないで生きることだ」
 日は暮れる。
「勿論。ボクも教えてほしいな。彼らがどう死を選んだのか。クラサメ君の代わりにはなれないけれど、ボクは魔導院の文官であの子たちは大事な生徒たちだからね。少しでも多く知りたいんだ」
 視界の端でついにナギが何かを叫びながら書類を引き裂いた。考えるのをやめたらしい。カルラが野次を飛ばしているようにも見えたが、その表情は笑っている。
 手伝ってくる、とマキナは告げてマントをカヅサに預けるとリィドが持ち上げようとしていた重たい瓦礫に手をかける。レムの手際のいいはずの処置すら痛みが酷かったのか、ムツキの叫び声が響く中、ぼんやりと月が深色の空に姿を現した。






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